成年後見で遺言

[0]TOP [1]未成年と成年後見
[2]前へ [3]次へ

成年被後見人の遺言〜判断力に欠ける?



成年後見で遺言
「遺言書」は…《満15歳に達している者》であり、《「遺言」する能力を有する者》が作成した場合に、法的な効力を認められています。『判断能力』に欠ける人は、「遺言者」にはなれません。

しかし、「成年後見制度」においては、『判断能力』を欠いている人でも「遺言書」を作成できる場合があります。

「成年後見制度」とは、認知症/知的障害/精神障害などの理由で、『判断能力』が不十分な人を保護・支援するための制度です。「成年後見制度」は、『法定後見制度』と『任意後見制度』の二つに大別されます。


「成年後見制度」の『法定後見制度』は、「後見」「保佐」「補助」の3つに分かれています。「成年後見制度」を利用する人の『判断能力』の程度などに応じて、内容がさらに細分化しているのです。

民法(後見開始の審判)
第七条  精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。

(保佐開始の審判)
第十一条  精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる。ただし、第七条に規定する原因がある者については、この限りでない。

(補助開始の審判)
第十五条  精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。ただし、第七条又は第十一条本文に規定する原因がある者については、この限りでない。
2  本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。


「後見」の対象は、〈『判断能力』が欠けているのが通常の状態にある人〉です。

「後見」の制度では、「家庭裁判所」が「成年後見人」を選任します。そして、「家庭裁判所」から「後見」の『開始の審判』を受けた人を、「成年被後見人」といいます。
「成年後見人」は、「成年被後見人」の利益を考えて行動をする、《「成年被見人」の代理人》…というわけです。

「成年後見人」は、「成年被後見人」の代わりに…日常生活に関する行為を始めとして、契約などの『法律行為』をすることができます(代理権)。

そして、「成年被後見人」が、「成年後見人」の同意を得ずにしてしまった不利益な『法律行為』については…「成年後見人」が、取り消すこともできます(取消権)。

「成年被後見人」とは、〈『判断能力』が欠けているのが通常の状態にある人(=「遺言能力」がない人)です。したがって、「遺言者」とはなり得ないのです。

しかし、「成年被後見人」も、周囲の人の発言内容を理解し受け答えなどができる場合があります。『判断能力』が、一時的に回復したときです。(チャンス!)

「成年被後見人」であっても、『判断能力』が回復しているときは、「遺言書」を作成することができます。ただし、2人以上の医師が立会うことが必要です。(民法973条)

民法(成年被後見人の遺言)
第九百七十三条  成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師二人以上の立会いがなければならない。
2  遺言に立ち会った医師は、遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して、これに署名し、印を押さなければならない。ただし、秘密証書による遺言にあっては、その封紙にその旨の記載をし、署名し、印を押さなければならない。


立ち会った医師が、「遺言」をした時点において、「遺言者」(=「成年被後見人」)の『判断能力』に問題がなかったことを「遺言書」に付記して署名・押印すれば…法的に有効な、「成年被後見人」の「遺言書」となります。
PCサイト

[1]未成年と成年後見 目次へ
[2]前ページへ
[3]次ページへ
[4]このページ一番上へ

[0]TOPページへ


当サイトの分野別目次
遺言とは | 遺言のすすめ | 未成年と成年後見 | 自筆証書と公正証書 | 手続と訂正と撤回 | 執行と遺留分 |