危急時遺言

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危急時遺言〜臨終と船舶遭難の方式



危急時遺言
「遺言書」を作成するときは、民法で厳しく定められている所定の方式に従わなければなりません。

「遺言」の方式は、『普通方式』と『特別方式』の二つに分けられます。読んで字のごとく…一般的に「遺言」を作成する場合は『普通方式』が、「遺言者」が特別な状況にある場合は『特別方式』が用いられます。

・『特別方式』の「遺言」は、「危急時遺言」と「隔絶地遺言」の二つに分けられています。「危急時遺言」は死亡の危急に迫っている場合、「隔絶地遺言」は一般社会から隔絶されている場合の「遺言」です。

・そして、さらに…「危急時遺言」には「一般危急時遺言」と「難船危急時遺言」があり、「隔絶地遺言」には「一般隔絶地遺言」と「船舶隔絶地遺言」があります。
これらの『特別方式』の「遺言」は、それぞれの状況に応じて、法律の定める方式で行います。

・「一般危急時遺言」は、病気やその他の事情のため死亡の危急に迫っている人ができる「遺言」です。一般臨終遺言や死亡危急者遺言ともいわれ、3人以上の『証人』の立ち会いが必要です。(民法976条)

民法(死亡の危急に迫った者の遺言) 第九百七十六条  疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者が遺言をしようとするときは、証人三人以上の立会いをもって、その一人に遺言の趣旨を口授して、これをすることができる。この場合においては、その口授を受けた者が、これを筆記して、遺言者及び他の証人に読み聞かせ、又は閲覧させ、各証人がその筆記の正確なことを承認した後、これに署名し、印を押さなければならない。



「遺言者」は、『証人』の1人に「遺言」の趣旨を口授します。口授を受けた『証人』はそれを筆記して、「遺言者」と他の『証人』に読み聞かせます。その筆記が正確な事を承認して、各『証人』が署名・押印することで…「一般危急時遺言」となります。

「難船危急時遺言」は、船舶遭難の場合において、船舶中で死亡の危急に迫っている人ができる「遺言」です。船舶遭難者遺言ともいわれ、2人以上の『証人』の立ち会いが必要です。(民法979条)

民法(船舶遭難者の遺言) 第九百七十九条  船舶が遭難した場合において、当該船舶中に在って死亡の危急に迫った者は、証人二人以上の立会いをもって口頭で遺言をすることができる。


「遺言者」は、口頭で「遺言」をすることができます。『証人』が、「遺言」の趣旨を筆記して署名・押印をすることで…「難船危急時遺言」となります。

「危急時遺言」は、「遺言」を行った後に「家庭裁判所」に請求して、《「遺言」の確認》を得なければなりません。請求をするのは、『証人』の一人または《利害関係人》です。

「家庭裁判所」は…請求のあった「遺言」が、〈「遺言者」の真意によるものである〉…との心証を得なければ、《「遺言」の確認》をすることができません。そして、《「遺言」の確認》が得られなければ、「遺言」としての効力は生じません。

《「遺言」の確認》の請求には、期限があります。

「一般危急時遺言」は、「遺言」をした日から20日以内です。「難船危急時遺言」の場合は、日数制限ではなく…〈確認ができるようになってから遅滞なく行えばよい〉…とされています。さて、どのくらいから《遅滞あり》なんでしょうね‥?

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