遺言執行者

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遺言執行者〜信頼の証



遺言執行者
「遺言書」に記されている事柄は、《「遺言者」の意思》‥と、言えるでしょう。しかし、「遺言」の効力が発生するのは、「遺言者」が死亡した後です。

「遺言者」は…〈果たして、自分が作成した「遺言書」の内容通りに「相続」は行われるのか?〉‥など、「遺言」が実現されるのを確認することができません。

「遺言書」に書かれた内容を実現する…つまり、「遺言」を執行する権利を持つ人を、「遺言執行者」といいます。「遺言執行者」は、相続財産(=遺産)を管理して、「遺言書」の内容通りに遺産分割を行います。

「遺言者」にとって、「遺言執行者」が心底信頼できる人物であれば…直接《「遺言」の執行》を見届けられないにしても…「遺言者」は、安心して「遺言書」を作成することができますね。

「遺言」をする人(=「遺言者」)は、「遺言」において…「遺言執行者」を指定するか、第三者にその指定を委託することができます。「遺言」で「遺言執行者」が指定されていないとき、または「遺言執行者」が死亡したときは…「相続人」などが「家庭裁判所」に申立てをすることによって、「遺言執行者」を選任することができます。

民法(遺言執行者の指定) 第千六条  遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。
2  遺言執行者の指定の委託を受けた者は、遅滞なく、その指定をして、これを相続人に通知しなければならない。
3  遺言執行者の指定の委託を受けた者がその委託を辞そうとするときは、遅滞なくその旨を相続人に通知しなければならない。

(遺言執行者の選任)
第千十条  遺言執行者がないとき、又はなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によって、これを選任することができる。



遺言の解釈等について相続人間に意見の相違があるというだけでは,遺言執行者を追加選任する理由にならない。(大阪高決・昭和32年2月16日)

遺言の効力に疑いがあるときは,家庭裁判所は,その効力について審判することなく遺言執行者を選任するのが相当である。(東京高決・昭和27年5月26日)


☆裁判所ホームページ『遺言執行者の選任』
http://www.courts.go.jp/saiban/syurui/kazi/kazi_06_18.html

「遺言執行者」においても、法律上の規定があります。

民法(相続財産の目録の作成) 第千十一条  遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければならない。
2  遺言執行者は、相続人の請求があるときは、その立会いをもって相続財産の目録を作成し、又は公証人にこれを作成させなければならない。

(遺言執行者の権利義務)
第千十二条  遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。

(遺言執行者の地位)
第千十五条  遺言執行者は、相続人の代理人とみなす。


「遺言執行者」になれない人を指定したり、「遺言事項」でない事項について「遺言執行者」を指定すると、無効となってしまいます。「遺言」が無効になってしまえば、《「遺言者」の意思》は実現されません。

また、「遺言」の内容に、『「相続人」の廃除とその取消し』および『子の認知』が含まれる場合…「法定相続人」のみによる《「遺言」の執行》に対し公正さが危ぶまれ、中立な立場の「遺言執行者」が必要となります。せっかく作成した「遺言書」が、「遺言執行者」に関する違法により効力をわないよう、注意したいものです。

「遺言執行者」になるために、特別な資格要件は必要ありません。未成年者と《破産者》を除けば、誰でも「遺言執行者」になれるのです。(意外ですね‥)

しかし、〈誰でも「遺言執行者」になれる〉とはいえ…「相続人」たちで《「遺言」の執行》を行うと、相当な時間を費やすことが多いようです。《「遺言執行者」の選任》については、専門的な知識や経験をもつ、「弁護士」「司法書士」「行政書士」などの《専門家》に依頼するのが良いでしょう。

なお、「遺言執行者」への費用(報酬)は、相続財産から控除することが可能です。


指定遺言執行者が終始その就職を拒否し続けていることが明らかな場合は,家庭裁判所は,その者を解任するまでもなく,他の者を遺言執行者に選任することができる。(長崎家審・昭和40年9月11日)

遺言執行者に就任した弁護士が,外見上の受遺者に対し,遺言書が効力を有しないことを告げ,遺産に対する権利行使の機会を失することのないようにすべき注意義務を怠ったとして,遺言執行者に対し損害賠償の支払を命じた。(東京地判・昭和61年1月28日)


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