遺言の裏技…保険と遺言

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ウラ技・生命保険金を遺言で調整



遺言の裏技…保険と遺言


「生命保険金は遺産分割とは無関係…相続は遺言で!」

相続財産?


〈大きな財産は自宅だけ〉‥ということが、よくあります。しかし、二人の子に分けたくてもできません。そこで、『生命保険』の登場です。

長男に自宅を《相続》させ、次男には保険金を渡せるように、『生命保険』に加入します。その通りになればいいのですが、そうとは限りません。

親に『生命保険』の契約があったので、保険金の受取人を次男に変更しました。そして、親が死亡します。当然、生命保険金の受取人である次男が、保険金を全額受け取ります。

固有の財産!

生命保険契約とは、生命保険会社と親との契約です。親は…〈自分が死亡したときは、保険会社が保険金受取人に、所定の保険金を支払う〉‥という契約を、保険会社としたのです。

保険会社は、この契約に従って、「死亡保険金」を支払います。これは、相続財産ではなく…契約による金員の支払いであり、次男の固有の財産となります。生命保険金は、相続財産ではありません。

保険契約により保険金額受取人として指定された者の有する権利は、同人固有の権利であってこれに基づき保険者より受領した金銭は同人固有の財産である。‥‥大審院判決・昭和6年2月20日


遺産分割協議

さて、自宅を長男名義にするには…長男と次男で、〈長男が自宅を相続する〉‥という「遺産分割協議」をします。次男が納得すれば、親の期待通りです。
しかし次男は、この遺産分割に合意しなくても良いのです。生命保険金は、次男固有の財産であって相続財産ではないのですから、「遺産分割協議」とは無関係です。保険金は別として、〈法定相続分に従って自宅を半分ずつに分けてほしい〉‥と主張できるのです。

特別受益

〈生命保険金は特別受益である〉として、「死亡保険金」を相続財産に加算する考え方もありました。これなら次男の相続分が少なくなり、長男が自宅全てを相続できるかもしれません。

しかし、平成15年10月29日の最高裁判決で、〈特段の事情がなければ特別受益には該当しない〉ことになりました。

遺言と遺留分

次男を保険金受取人にしたのであれば、長男には、〈自宅を長男が相続する〉‥という『遺言』を残します。これで長男は、自宅を相続できます。

しかし、自宅以外に相続財産が無い場合…次男は、当然の権利として、「遺留分減殺請求」をすることができます。

次男の法定相続分は、50%です。『遺言』により受け取る財産が、その半分の25%(遺留分)未満であれば、長男に対する「遺留分減殺請求」が可能です。

負担付遺言

保険金受取人を、長男にする方法もあります。〈自宅を長男が相続する。ただし長男は次男に幾らか渡す。〉‥という、《負担付遺贈》の『遺言』にするのです。

長男は生命保険金を受け取って、その保険金から、次男に指定された金額を支払います。長男は自宅を《相続》できますし、「遺留分」の問題も生じません。次男は、『遺言』により長男からの現金を得ているため、「遺留分減殺請求」はできません。

法定相続分

長男がこの『遺言』に従わず、次男に現金を支払わなければ、モメるでしょう。長男が自宅を自分のものにしたにもかかわらず、次男が督促しても支払いを行わない場合…裁判所は、この《負担付遺贈》を、取り消すことができます(民法1027条)。

民法第千二十七条  負担付遺贈を受けた者がその負担した義務を履行しないときは、相続人は、相当の期間を定めてその履行の催告をすることができる。この場合において、その期間内に履行がないときは、その負担付遺贈に係る遺言の取消しを家庭裁判所に請求することができる。


『遺言』が取り消されると、自宅は、《法定相続分》で分けることになります。長男は、保険金を全額受け取った上、自宅の半分(法定相続分)を手にするのです。

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