遺言の実際…遺言の数

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遺言の数…実際には



遺言の実際…遺言の数


何枚にもつづられた遺言書。どっからどこまでが一つの遺言書なのでしょうか。べつのものとされたら大変です。

実際の裁判所の判断をみてみましょう。

■形式的には2個の遺言とみられるが,第一葉の遺言が遺言としての具体性に欠け,第二ないし第四葉のみがその具体性を有しており,かつ,その間になんら抵触するところはなく,それぞれの内容及びそれが一級となっている状態からすれば,1個の遺言とみるべきである…約1年の長きにわたり数次の訂正を経て最終的に決意した日を第四葉末尾に記載した日をもって遺言成立の日とみるべきである。…後の日付をもって遺言書の日付と解すべきである(東京高判・昭和55年11月27日)

■横にのりづけされた2葉の遺言証書の1葉にのみ日付・氏名の自書・押印があるときでも,当初から1通の遺言書として作成されたことが判明すれば有効な遺言である。(最判・昭和36年6月22日)
「遺言書が数葉にわたるときであっても,その数葉が1通の遺言書として作成されたものであることが確認されれば,その一部に日附,署名,捺印が適法になされている限り,右遺言書を有効と認めて差支えないと解するを相当とする。……本件遺言書は,当時病気中の被控訴人の夫恵美延太郎が被控訴人に紙と硯とを持参することを命じ,被控訴人の差出した横に糊継をしてある障子紙用紙(本件遺言醤用紙)に,病床で,しかも病苦にあえぎながら,中途で幾度か休息をとりつつ書き認めたもので……当初より1通のものとして作成せられたことは明かである。従って其の前葉の紙面に遺言書の自署による日附,署名がなく,捺印してなくても,後葉の紙面にそれ等が為されている以上自筆証書による遺言醤として有効のものと解するを相当と考える。(広島高判・昭33年3月12日)」

■遺言書が数葉にわたる場合,その間に契印,編綴がなくても,それが1通の遺言書であることを確露できる限り,右遺言書による遺言は有効である。(最判・昭和37年5月29日)
「遺言書が数葉にわたる場合,その間に契印,編綴がなくても,それが1通の遺言書であることを確認できる限り,右遺言書による遺言は有効である,と解するを相当とするところ,原審は挙示の証拠により,本件遺言書は2葉にわたり,その間に契印がなくまた綴じ合わされていないが,その第2葉は第1葉において譲渡するものとされた物件を記載され,右両者は紙質を同じくし,いずれも遺言書の押印と同一の印で封印された遺言書の署名ある封筒に収められたものであって,その内容,外形の両面からみて1通の遺言書であると明認できるから,右遺言12Fは有効である旨判断したものであって,右は正当である。所論はひっきょう右と異なる独自の見解の下に原判決を論難するものであって,論旨は採用できない。」


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