■公正証書遺言においては,2名の証人は最初から最後まで間断なく立ち会うことを要する。(大阪控判・大正6年5月24日) ■公正証書遺言に際し,立会証人はすでに遺言内容の筆記が終わった段階から立ち会ったものであり,その後公証人が右筆記内容を読み聞かせたのに対し,遺言者はただうなずくのみであって,ロ授があったとはいえず,右立会証人は右遺言者の真意を十分に確認することができなかった場合には,右公正証書遺言は民法969条所定の方式に反し無効である。(最判・昭和52年6月14日) ■同席の近親者から遺言者に対して誘導的な質問を発したのに対して,遺言者から公証人に聞きとり難いような程度の応答があったにもかかわらず,その答の意味だとして同席者が伝達説明した内容をもとに作成された公正証書遺言は口授をしたことにならない。(大判・昭和13年9月28日) ■物件の詳細については別にしたためた覚書によるとして,その部分のロ授を省略したときでも公正証書遺言のロ授があるといえる。(大審院判・大正8年7月8日) ■遺言者から交付された書面に基づき,公証人があらかじめ書面を作成しておき,証人立会いのもとで,公証人が「さきに交付を受けた書面のとおりか」と訊し,遺言者が「その通り」と答えただけの場合でも,適式なロ授があったといえる。(大審院判・昭和9年7月10日) ■遺言者が手術にたえられないほどに病勢が進んでいるときは,自署がまったく不可能とはいえなくとも,通言者の署名・押印に代えて公証人が付記することで,公正証書遺言は有効に成立する。(最判・昭和37年6月8日) |