遺言の裏技…直前贈与

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ウラ技・遺言より生前贈与



遺言の裏技…直前贈与


「相続開始年分の生前贈与は相続税…遺留分減殺請求の対象に!」

相続


財産の『相続争い』を避けるには、「遺言」がいちばん。「遺言」があれば、「遺産分割協議」をする必要がありません。…が、「遺留分(減殺請求)」には、注意が必要。

だから、「遺言」と「遺留分放棄」の二点セットが万全策です。でも…な〜んか面倒。

死亡後に大騒ぎすることが分かるなら、生存中に分けておけばいいのに…。

贈与

財産分与を考えるなら…
《「遺言」+「遺留分放棄」》より『生前贈与』の方が、シンプルに解決できそう。

しかし、『贈与税』の多額なこと!シンプルゆえの、恐ろしさ(?)…。そして、強烈なのは…《相続開始年分の贈与》です。

相続を開始した年に受けた贈与は、「贈与税」の対象にはなりません。『相続財産』とみなされて、「相続税」がかけられます。

《相続開始年分の贈与》は「相続税」

ある年の4月…病床の親が、長男に1億円を贈与しました。さて、親が年内(12月まで)に死亡した場合…

1億円は、「贈与税」ではなく『相続税』の対象になるわけです。そして、通常(親が存命)の場合なら…翌年の3月に、「贈与税」が約5000万円かかります。

「相続税」の仕組

《相続開始前3年間の贈与》については、算出された「贈与税」を相続税で計算し直して、清算することになっています。

3年間で1,000万円の贈与を受けて、「贈与税」が300万円の場合…
相続税の計算をするときに、贈与された1,000万円を『相続財産』として、加算します。こうして算出された相続税額から、既に支払った贈与税額300万円を差し引きます。

このように、《相続開始前3年間の贈与》は、実質的には相続税の対象になります。

年内なら「相続税」のみ

《相続開始年分の贈与》は、《相続開始前3年間の贈与》に含まれます。

当然《相続開始年分の贈与》も、「贈与税」の申告をして納税したうえで、「相続税」で清算すると思いきや…「贈与税」は無く、相続税課税だけなのです。

既に支払ったモノを同一年に清算するのは面倒だから、〈「贈与税」ナシの相続税申告だけで済ませていい〉‥ということですね。

贈与した財産はどうなるか

贈与済みの財産は、『相続財産目録』には入りません。『遺産分割協議』の対象にも、なりません。

ですから、1億円の贈与を受けた長男は…
ビタ一文もらえなかった《他の相続人》に勘付かれなければ、安泰です。でも、勘付かれなかったとしても…
「相続税申告書」に、〈1億円の贈与があった〉ことを記載する必要があります。
普通の人は気付かなくても、専門の人が申告書を見れば、すぐ分かります。『プロ』ですから…。

相続人たちの攻防

さあ大変。《他の相続人》に、気付かれてしまいました。
相続人は…

《長男が受けた贈与》を相続財産に回復させるため、〈贈与は架空だ〜〉‥と訴えようとします。

「相続税」の計算上、『生前贈与財産』も相続財産とみなされて、加算されます。

贈与された財産も、「遺留分減殺」の対象になるのです。「生前贈与を」無条件に許せば、『遺留分』の意味がありません。

そこで…《相続開始前1年以内の贈与》と《遺留分権利者に損害を与える贈与》については、「遺留分減殺」の対象とされるわけです(民法1030条)。

民法(遺留分の算定) 第千三十条  贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。


損害目的の贈与?

《遺留分権利者に損害を与える贈与》‥の『損害』については、広く解釈されています。

損害に当たるか否かは別として、遺留分を意識した判断が、なされるようです。
《損害を与える》ことが目的だとすれば…

当然、《相続開始前3年間》のように、期間の限定はありません。
何年たっても、《遺留分減殺の対象》から逃げられないのです。
『損害目的』の立証については、「遺留分減殺請求」をする側に、責任があります。(大審院判大10.11.29.)

幸せなリスク

親の病状が回復して、翌年以降も生き続けてくれれば、幸せです。
でも、《1億円の贈与》は…モロ、「贈与税」の対象です。最大のリスクですね。

また、遺産分割争いの結果、《1億円の贈与》以外に相続財産が何も無ければ…
やはり「相続税」でなく、「贈与税」になってしまいます。
《相続開始年分の生前贈与》は、大喧嘩のモト。
贈与を受けた側が負けたとしても…『遺贈』(遺言による財産)ではないので『減殺取り戻し』の対象にならず、『贈与財産』としては守れるのですが。

直前ではなく延々と

《相続開始年分の贈与》に限らず、『基礎控除2500万円相続時精算課税制度』を使えば、時間をかけた相続対策が可能です。何年でも、ゆっくりと…。
従来型の『基礎控除110万円』を使って、贈与を続けることもできます。毎年、延々と…。

「相続開始年分」のように、贈与が『直前』に行われれば…普通の人でも、すぐ分かります。でも、『昔』の贈与なら…「プロ」でないと気付かれにくく、他の相続人は気がつかなくなるかもしれません。

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