遺言の実際…遺言の訂正

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遺言の訂正…実際には



遺言の実際…遺言の訂正


自筆証書遺言の訂正はきっちりしないといけません。だから書き損じたら書き直しが一番です。でも面倒だから訂正したくなります。特に日付の訂正は注意です。

実際の裁判所の判断をみてみましょう。

■加除・変更につき適式な方式を具備していない場合でもこれによって遺言書が無効になるのではなく,遺言書は加除・変更がなかったものとして有効。(東京地判・平成3年9月13日)
「しかしながら,そもそも,加除・変更がなされているにもかかわらずこれにつき適式な方式を具備していない場合においても,これによって遺言書が無効になるのではなく,遺言薔は加除・変更がなかったものとして有効であるところ,甲第11号証の遺言書には,現実には,加除・変更はなく,単に二重筆記ないし誤記が認められるにすぎず,しかも,日付については右で検討したとおり特定曰の記載として有効であると認められ,また,「・・・・」の部分についても,その記載自体から太郎の意思を確認するについて全く支障がないので,これらが遺言の効力に影響を及ぼすものではないこと明らかである。」

■日付は年の「九」と月の「三」は元の字が判読できない程度に抹消したうえ,その横に記入されており,これには法で定める署名・捺印,変更場所の指示,変更した旨の付記などない遺言書の効力が問題となった事例で、日付自体が判読できぬように抹消され,様式を欠く方法で訂正されていては,いつ作成されたものか判断できず,遺言は全部無効である(仙台地判・昭和50年2月27日)


■遺言者の署名がなく他人の筆になる加除変更でも,加除変更の部分が僅少かつ付随的・補足的なものにすぎないときは,加除変更だけが無効であり遺言は有効である。(大阪高判・昭和44年11月17日)
「訴外……が昭和37年5月29日本件遺言書中の第6,7および9項の加除変更部分を除き遺言文,日付および氏名を自署して押印し9項目から成る遺言書を作成したうえ,右遺言書を所持して弁護士……へ相談に行き,同弁護士より遺言文の内容は別として文意上の疑義や不明瞭な若干の箇所を指摘されてその箇所の訂正を依頼し,同弁護士が右……の面前で右遺言書第6,7および9項中の各1部を加除変更(ただし第7,9項は加入のみ)するに至ったこと,右加除変更は内容をあらたにする全然別個の遺言というよりはむしろ従前の文意を明確にするものであること,右加除変更についてその場所に押印がなく,ただ欄外にその旨の付記押印があるが,遺言者の署名がないこと,および本件遺言書は右加除変更部分を除き遺言者が4通作成した同一内容の遺言書中の1通で,同弁護士が保管していたものにつき検認をうけるに至ったものであることが認められ,右認定を妨げるに足る証拠はない。以上の事実によれば,本件遺言は遺言者が加除変更部分を除く遺言文を自書し,かつ遺言書に日付および氏名を自書しこれに押印して作成した遺言書によるものであるが,その遺言書中の一部に加除変更があるからその限りで自筆証書遺言における全文自署の要件を欠き,またその加除変更は遺言者以外の他人によってなされ,かつ遺言者の署名を欠くから,加除変更の要件を欠くものというべきである。したがって,明白な誤記による訂正の限度を超える加除変更部分の意思表示は,民法968条2項により無効である。もつとも,右加除変更部分は本件遺言中の僅少部分に止まり付随的補足的地位を占めるにすぎず,その部分を除外しても遺言の主要な趣旨は表現されているばかりでなく,右加除変更が遺言者の意思に従ってなされたものであるから,右加除変更だけによっては,本件遺言全部を無効とすることはできず,他に特段の事情のない限り加除変更がない場合としてなお効力をもつものと解すべきである。」


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